循環型経済は地域活性化の道を切り開くのか?

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そうなんです、地方で暮らす人の多くは、買い物で地域外にお金逃しすぎなんです。

これは個人の志向ではなく、構造的な問題です。

最近、『「循環型経済」をつくる』という本を読みました。

地域活性化、地域でのこと起こしに興味がある人は、読むべき一冊でしたね。

と言うわけで今回は、循環型経済が地域活性化の道を拓くかどうかを考えてみます。

地方が疲弊し続ける現状

島根県西部地域のある年のデータによれば、住民所得の年間総額が1,556億円だったのに対し、モノやサービスを域外から調達するのにかかった額が年間で1,420億円だったそうです。

つまり、1年間一生懸命働いた分の稼ぎを、ほぼそのまんま地域の外へ差し出しているということです!

農産物などの地物を域外へ出荷することも当然ありますが、域外調達が出荷額を上回ってしまっているので地域としては全く儲かっていません。

国や県から降りてくる補助金、交付金、年金などがなければ全くバランスが取れなくなるという状況。

地域にお金がなく、地域外にお金がある状態が続けば、当然人もお金がある方へと動きます。だってそっちの方が稼げるから。

 

うへぇ〜。そりゃ地方も疲弊するわけだわ。

梅田将成

でも、これは全国の地方において当たり前のように起きている現象です。

食料品の移入超過は致命的

例えば電気機械部門の移入超過はある意味仕方のないことです。全国に工場があってもしょうがないことですし。

ですが、広大な田畑や豊富な海洋資源を抱える日本の地方において、食料品の移入超過は致命的です。

他に勝負できる分野なんてほとんどないんですから。

先の例であげた島根県西部域のデータでは、同じ年の食料品の移出額が18億円だったのに対し、移入額は149億円。

桁が違っちゃってます。

ちなみに、この圏域の人口で割ると、一人あたり年間で20万円分の食料を域外から買ってることになるんだとか。

これも全国的に珍しくもなんともありません。どこも似たような感じです。

やばいっすねぇ…。

循環型経済の仕組みは地方を潤す! 取引を繰り返すと違いが見える

地域で生産されたものを地域内で購入することによって、地域内循環が生まれます。

この循環効率を高めると、地域内所得の総額がえらいことになります。

仮にある事業に100万円投資したとします。(最初の取引で100万円の売り上げがあったと仮定してもいいです)

仕入れ、賃金などの経費が地域の中で賄われる場合と域外調達で賄う場合とを比較してみましょう。

域内循環率60%の場合

100万円からスタートし、地域内循環で60万円が地域に入ります。(40万円流出)

次の取引で60万円の60%で36万円(24万円流出)

次の取引で36万円の60%で22万円(14万円流出)

の繰り返し

となります。もし循環率を高めていければどうなるでしょうか?

域内循環率80%の場合

100万円からスタートし、地域内循環で80万円が地域に入ります。(20万円流出)

次の取引で80万円の80%で64万円(16万円流出)

次の取引で64万円の80%で51万円(13万円流出)

の繰り返し

どうでしょうか。3回取引した時点で、地域に残るお金に倍以上の差が出るんです。

でも現実は…

なぜみんな外に出て買い物をしたり、ネット販売などで外からモノを買うんでしょう?

いやまあ、安いからですよね。w

確かに地域内にお金が落ちるのがいいことだってみんな知ってます。

でも、目の前にある家計簿の数字を優先してより安いものを買うのは当然のことです。

スーパーやネット販売と比較して遜色ない価格にまで抑えるか、少し高くても買いたくなるように消費者の意識を動かせるような能力がないとかなり苦しい戦いになるでしょう。

それでも田舎では食料とお金を循環させるべき!

農家や漁師が結託し、自分たちで卸し、経営する産直の販売機能を持てれば話は別でしょう。

道の駅などがこういう役割を担うのが良いんでしょうけど。

例えばスーパーは市場から卸された価格にスーパーの利益になる分を上乗せするわけですから、最初から自分たちで売ればスーパーよりも安く売ることができます。

さらに、輸送コストがほとんどかからない「フードマイレージ(食物輸送距離)」が少ないという地の利を持っています。

ほんとは、地域内資源は安いんです。

最終的な売値を量販店の価格に合わせるなら、むしろ生産者の収入が増えるくらいです。

お店側も仕入れの多くをを域内で賄えれば取引のたびに地域内にお金を残していけます。

本来なら、家計に優しく、生産者の顔が見える安心感があり、そして美味い、と言う食料供給は可能なのです。

循環型経済は活性化の”サブシステム”

もちろん、普段口にするあらゆる食べ物の域内生産・域内供給を実現しようなんて無理な話です。山間部では魚は獲れないし、肉や小麦なども、生産力をもつ地域は限られていますから。

だから、地域内循環の構築は、地域活性化のメインシステムにはなり得ません。

下手に地域の気候に合わない作物の生産に手を出したり、莫大なコストを払って魚の養殖や畜産を始めるとえらいことになっちゃいます。現実的じゃありません。

地域内にお金を入れるシステムなら、地物に付加価値を乗せて外貨の獲得を狙った方が手っ取り早いし、単価も総額の規模も期待できます。メインならこっちでしょうね。

地域で活かせる品目を整理し、その地域の仕様で細かくカスタマイズされた特化型循環モデルを練れば、地域に何人か分の雇用を賄う所得は生み出せるでしょう。

梅田将成

地域で雇用を作れたらそれはもう立派な活性化!

メインにはなれなくても、地域活性化のサブシステムとして検討する価値は大いにありそうです。

まずは地域の潜在的な強みを知るべし。

『「循環型経済」をつくる』は、この本自体を教科書に地域づくりを実践する、というよりは、地域の強みを見直すきっかけにするべき本といった印象です。

こんなに豊富にあるのに地域のものを使わないで他所から仕入れてる!的なものを見つけてしまえばそこにローカルビジネスのチャンスがあります。

この本では、地域内外のお金の動きについて家計ベースで丹念に調査されたデータが元になっているのでかなり勉強になります。

食料だけでなく、地域のエネルギー循環についても詳しく書いてあります。

「地域活性化」「持続可能」などのフレーズに思うとこがある人は、読んでおくべき一冊です!

一度手に取って読んでみて、地域の強み、探してみてください!